令和2年 年頭所感

2020年 年頭所感

新年あけましておめでとうございます。

 

日本羊毛産業協会はウール製品の価値向上と普及に向け、開発・情報発信を行う

羊毛産業の団体として活動しています。

また、他の繊維業界の各種団体と足並みを揃え政府や日本繊維連盟に対して繊維

業界活性化のための要望や意見を提出する活動も続けています。

繊維製品全体で見れば羊毛製品のシェアは1%台に過ぎませんが、欧米や急成長を

見せる中国では洗練された上質な衣料素材としてのウールに対する評価は確立して

おり需要も引き続き旺盛です。

近年の当業界の最大の関心事は継続する羊毛価格の上昇です。

一昨年8月には、EMI(東部市場価格指標)で2,116セント(豪ドル)と史上最高値

を更新しました。 しかし米中貿易摩擦の影響を受け、昨年の8月から下落が始まり

9月第1週には1,365セントまで下がりましたが、米中貿易交渉の進展により中国の

購入が少し戻ってきており、昨年の年末には1,558セントで取引されております。

しかしオーストラリアの旱魃等による産毛量の縮小、世界的な需要家からの非ミュール

ジング羊毛への移行により価格の安定については厳しい状況が続いていると考えます。

需給バランスは依然としてタイトで今後の上昇を予想する見方が多いのが実情です。

昨今の染料の価格上昇、労働コスト、エネルギー、運送費の上昇も加わり、国内繊維

製品の低価格志向が続く環境下で、日本の羊毛業界企業の収益は圧迫されました。

需要に牽引される価格上昇は一般にその産業にとって発展をもたらす好機とされる

ものだからです。

取り分け中国では富裕層、中間層の拡大とその天然素材志向の高まりの中で需要が

大きく伸びています。

また、日本でもデフレ経済から脱却し、良い商品を適切な価格で購入する動きも

広がっています。

こうした動きを踏まえ、業界としては、まず、国内で天然素材ウールの価値と魅力

を強く伝えていきたいと考えています。

その機能的な素晴らしさに加え海洋汚染につながるマイクロポリエステルへの懸念や

国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の視点からも、世界で高く評価される

ウールの認知度をわが国でも高め、日本の消費者にアピールして行きます。

次に、既にウールへの評価が定着している海外市場へのアクセスが不可欠です。

幸い、その前提となる広域通商交渉が大きな進展を見せ、TPP11、日EU EPAが発効

しました。

これに加え今年度には中国・韓国を含めたRCEPの交渉が纏まり関税障壁がなくなる

方向に進めば、欧米のみならず成長著しい中国マーケットに対し、確かな物創りによる

高品質な日本製の繊維商品を展開できるようになるでしょう。

協会としてもこうした動きに最大限の協力を行い日本の羊毛産業の発展のために尽力

する所存です。

 

                    2020年1月1日

                    日本羊毛産業協会  会長   長井 渡